中学生円山 - sacsra / NOTE

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中学生円山

再観賞

[あらすじ]

 円山克也は団地に住む平凡な中学2年生。彼は「あるエッチな目標」を達成するために柔軟体操をして体を柔らかくしようとしている。そんなある日、克也の団地に謎のシングルファーザー(下井辰夫)が引っ越してくる。

 DVD発売と同時に即ゲット。二度見をしたわけですが、冒頭からほぼ泣きっぱなしでした。元々、笑うために公開当時は見に行ったのですが、下ネタ嫌い且つ中学生男子を経験した事の無いわたしにとって前半の妄想劇は少々退屈にも思えました。しかしだからといって、第二次成長期真っ只中のただのエロ妄想おバカ物語と思ってはいけません。前半の隅々を見逃してはなりません。出てくる人物、小物の全てに意味があるのです。

 以下ネタバレです。(と言っても、映画感想はいつもネタバレなんですが) 見ようかなあと悩んでいる方は、どうせなら感想を見る前に作品を見て、その後にまたこの続きを読んでほしいと思います。


 

共通認識と真実は違う。
あり得ないを破壊しろ。
考えない大人になるくらいなら死ぬまで中学生でいろ。

現実に負けるな。
妄想と向き合え。
打ち勝て。

 

 「人を何故殺してはいけないの?」
 「だって捕まっちゃうじゃない。」

 「じゃあ捕まらなかったらいいの?」
 「いや、駄目でしょ。」

 「なんで?」
 「だって、ほら。家族とか、悲しむ人とか、周りにいるでしょ。」

 「じゃあ、悲しむ人がいなければ殺してもいいの?」
 「いや、駄目でしょ…。」

 「だから、なんで?」
 「……。」

 

 語弊があったらすみません。わたしはこれに対する万国共通全員が納得する100点満点の答えは無いと思っています。しかしながら、我々大人は”命”について散々考えさせられる機会を得てきました。だから、個人個人が納得なり、腑に落ちる答えは、必ずあるとも思っています。

 戦争では人殺しが正義とされた時代があった。死刑制度も国として行われている。子供が混乱するのは当然。

 上述のやり取りは円山くんと憧れの同級生の女子との会話なわけですが、円山くんは答えに詰まってしまうんですよね。まあそりゃそうだ。価値観における「どうして」「何故」は、人から教わるものではなく自分で形成していくものであり、我々大人は子どもたちが間違った方向に進まないよう進路を指し示すだけ、要は”しつけ”をするだけ、ルールを破ったら刑罰に処されるだけ。これをしたらいけない、は分かってはいても、何故いけないのかは知らないまま・分からないまま・考えないままに育っているんですものね。しかもコロコロ変わる。人によって言う事も違う。(ここら辺のくだりは、見ていて円山くんを代表とする子供を追い詰める描写ながら、わたしたち大人に向けられたメッセージだと感じました)

 

 答えられなかった問いを、円山が下井(草薙)に問うシーンは圧巻でした。なんで駄目なのか自分でしっかり考えろ。ちゃんと物事の本質を見ろ。ちゃんと自分の頭で考えろ。簡単に人から答えを得ようとするな。ちゃんと自分の中で自分の答えを出せ。←これは下井が言った言葉ではありませんが、わたしにはそう聞こえました。そして本当にポロポロと涙が流れてしまった。

 またその妄想に真剣に付き合い、大ちゃんまで風貌を似せていった事からして、下井の本心は捕まえて欲しかったのかもしれないな、とも思いました。右を見ても左を見ても無秩序なこの世界、生きていくにはあまりに辛すぎた。ルールを守らない、人の迷惑を省みない人間に対して、最もいけないルール違反を繰り返す下井。大ちゃんがいるのに……、ではなく、子供がいるからこそ、余計に彼をそうした行動へと駆り立ててしまったのかもしれない。下井というキャラクターは正直言えばよくあるキャラクターです。でもそれはこれでいいのです。主人公は円山くんなのだから。

 

 劇中にはボケ老人(本当にボケているのかは怪しいというか多分ボケてないw)扮するおじいちゃんがいるんですが。恐縮ながらこの方をわたしは存じ上げないのですが、遠藤賢司さん、通称エンケンと呼ばれ一時代を築き上げたロックシンガーが登場されます。

 この方が、歌うんですよ。やっと今回、エンドロールでタイトルを確認することが出来ましたがタイトル「ド・素人はスッコンデロォ!」wwww

 もう、度肝抜かれるんです。前半のダラダラした空気を一瞬で変えてしまう。正直、意味分からないし歌詞も音も聴き取れないんです。だけど凄い。凄い。なんか分からないけどなんか凄い。「なんか凄い」の「なんか」がきちんと言えないもどかしさがあるんだけどなんだかすごく凄い。後頭部を強打されるような猛烈なインパクトがありました。痺れました。

 二度目を見てわたしなりには「しっかり聴けー!話を聞けー!ぬるま湯に浸かってんじゃねえぞー!そして考えろー!ほら、何歌ってっかお前らわかんねーだろ!俺も良くわかんねえことはあるけどよ!でも、とりあえず分かったフリなんかしてんじゃねえぞテメエラ!!」かな、と。そんなふうに感じました。終わったあとのエンケンさんの「俺にもわかんね」の台詞ふくめて。

 なお、こんなファンキーなロックの後に河原で優しいフォークの歌を聴かせてくれるんですが、これがまた今度は180度真逆で涙が出るほど温かい。是非、見て聴いて頂きたい。

 

 話を戻します。

 下井は防犯カメラを自分で大量に取り付け住民を監視していました。そして「誰も見ていないからいいや」とやってしまうNG行動を録画し、「アダルト」とDISCラベルに書いて本人へこっそり投函し、注意喚起を行っていた。

 冒頭からずっと「届いた?」と笑顔で円山くんに聞いていたのは「そういうことはしちゃ駄目だけど、どうせやるならせめて顔を隠しましょうね」の保護者心がこもったマスク。なので二度目に見ると冒頭から泣いてしまうのですな。また、自分の子供がそうしたことを深夜に行っていることを把握していない親にはしっかりと注意喚起を行っている。頼もしくないけれど、いざという時には頼もしい優しいお父さん、仲村トオルさんもとっても良かったですね。坂井真紀さんも、イメージにはない美しくもコミカルな役どころで華を咲かせてくれていました。今回の役、すごくはまってた。クドカンも相変わらずキャスティング絶妙だなあ。

 

 上手に乗れなくなってしまった下井の自転車姿、後ろ姿を思い出すとまた泣けてきてしまいます。

 

 「正しく生きたい。ただそれだけ」

 下井の言葉は心に深く突き刺さりました。冒頭に赤字で記載した言葉は下井が発した言葉です。円山くんに向けているようで加害者に向けているようで自分に向けているようで、ギュッとしますね。

 

 円山くんや大ちゃんの心のケアなど細かい点も気になりますが、円山くんが自分の中で物事を咀嚼し解釈し成長し「正義っていうのは、人を殺してはいけない理由をちゃんと知っている人のこと」と一つの答えを導き出した事、そして何より伝えたかった「"どうして?何故"疑問を持て、自分で悩み続けろ」がきちんと伝わったところを見れて、なんだか下井の優しい笑顔が見れた気がしました。

 わたしが保護者のような気持ちで微笑んでしまったのかしら。そんな上から目線で見ていたつもりは無いんですが。ああそうか。その答えがわたしにも分かったから、自分に下井が「少しは救われたよ」と笑みを向けてくれた気がしたんだわ。

 ちなみに円山くんの目標の達成、教師の応援、同級生からの戸惑い。結果として大人の階段をひとつ上ったことを別の方法で表現したように見えましたね。劇中でも「その後、妄想しなくなった」とわざわざ語らせたのもその解釈に対する後押しとなりました。

 

 

 シナリオも素晴らしかったですが、やっぱり俳優陣の熱演も書かないわけにはいかないでしょうね。まずはやっぱり円山くん。この年頃の少年が、よくここまで頑張った。よくここまで演じきった。そして、些細な心境の変化を丁寧によく演じ分けた。体当たりの演技に加え繊細さも兼ね備えた彼、今後の活躍に期待増というところでしょうか。

 それからやっぱり草なぎ剛。本当に彼は素晴らしい。駄目な彼は本当に駄目駄目だし、かっこいい時は本当にかっこいい。恐い時は本当に恐いし、優しい時は実に優しい。同じ顔なのに何も言葉を発していないのに、彼の画面での存在感はここまでくると異様ですね。決して滑舌が良いわけでもないし、今の噛んだの?と思うような喋り方なのに、むしろそこが味として活きている。どのシーンも素晴らしかったですが、プールサイドでの草なぎ君の演技は過去に一度も見たことのない表情でした。ブラボー。

 

 ヤン・イクチュン?韓国俳優は本当にさっぱり分からないわぁ…かっこよさも分からないわぁ……と思っていたら「息もできない」の監督兼主役のあの人でしたか。彼が劇中で話した言葉、事実なのかもしれないとドキッとしました。

 「日本で人気が出ると韓国では叩かれる。自分だけじゃなく家族まで巻き込んで叩かれてしまう。街も歩けなくなる。」

 反日が強い世代からの拒絶、あって然るべきなのに考えたこともありませんでした。本当にハッとさせられた。自分は本当にいちいち考えが浅はかなんだなと考えさせられる一面でした。

 

 劇中で度々起こるアクションは、アクション映画とくらべても引けをとらない完成度でした。円山くん、最後中国雑技団みたいになるし(笑)もともと体柔らかい子なんですね、1度目見た時は合成かと思ったw

 

 まあ最後になりますが「中学生特有の中二病フィルターを通して描かれる世界」としてとても上手に表現されています。好きな作品です。この映画を「下らない妄想下ネタ映画」と解釈されてしまう事自体が、まさにこの映画が伝えようとしていることなんですよね。この作品が何を伝えようとしているのか、見てない。見ようとしない。

 確かに前半のくだりが本当に下らないのであの段階で匙を投げてしまう人がいるのもちょっと分かる気もしますが…、映画はやっぱり最後まで呼吸ひとつ丁寧に合わせて堪能してこそ、ですよね。あーなんか久々にSPEC以外の感想書いたな!気楽!(笑)

 

 

 あ、最後最後詐欺になってしまいましたが本当に最後。下井の部屋、明らかに見るからに変だったじゃないですか。円山くんは最初に入った時に驚かなかったんでしょうかね。それに電子レンジありました?見落としたかなあ。あの部屋のあの世界が意味する下井の心の中、分からないままです。ずっと揺らめいて、酸素が吸えない苦しい世界にいたのか。癒しと捉えるべきか。賃貸であの改造はルール違反なわけで、ルール違反を嫌った彼らしからぬ行動はどういう意味と捉えるべきか。自身への戒めなのか。(ちなみに部屋に円山くんにDISCを見せたのはわざとだと思っています。)

 

 中学生円山、満点!色々な事も考えさせられる素敵なコメディに昇華されていました。しかし中学生の男子って本当にあそこまで馬鹿なの?(笑)

過去に書いた記事もちょいちょい書きなおしたりします。記事作成日はリスト調整のため、手動でいじる事が多いため、観賞順ではありません。
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