クロニクル - sacsra / NOTE

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クロニクル

初鑑賞

[あらすじ]

 とある高校生が自分の日々を記録(クロニクル)した映像が発見された。そこに映っていたのは――。

 主人公は高校生のアンドリュー。自分でも理由は分からないながら、ビデオで自分の日々の全てを記録し始めるところから物語は始まる。父は働かず朝から酒浸り、力任せの暴力に怒号に次ぐ怒号。母はとても優しいが、病気で酷く衰弱している。学校ではイジメのターゲットにされている。話せる相手は従兄弟のマット1人だけ。

 臆病で冴えないアンドリュー。しかし、とある事をきっかけにマットに加え、学校一の人気者スティーブと3人で秘密を共有することになる。3人に超能力が芽生えるのだ。そして3人の友情はどんどん確固たるものへと変化してていく、のだが…。

 危うく、よくある男子高校生3人組のイタズラ友情物語かと思って薄っぺらく解釈しそうになってしまいました。これはそんな作品ではありませんね。監督デビュー作とのこと、見るに原案にも関わっている。仲間内で作ったのかな。将来が楽しみ。主役を演じた新人デイン・デハーンも地味役ながら華がありスター的資質を感じさせてくれます。他の二人も演技がとっても器用だった。

 


 

 非常に巧みに作られた作品でした。とても良いものが見れました。映画ってやっぱり良い!!ちなみに本作では監督たちも新人、配役も新人、撮影期間も短く撮影スタイルもP.O.V方式。制作費1200万$ということでB級にカテゴライズされていますが、非常に質の高い作品だと思います。「28日後...」を見た時のインパクトを思い出しました。革命的発想をドヤ感を見せずにサラリと。見逃してしまう人も多いハズ。その後のダニー・ボイル監督の活躍は皆様の知るところ…。(スラムドッグ・ミリオネアや127時間、トランス!)

  • アンドリュー
     主人公。内向的で自分に自信が無い。殴られても蹴られても罵声を浴びても黙ってひたすらに撮影し続ける。

  • マット
     アンドリューの従兄弟。至って普通の高校生。アンドリューにも優しい。彼女を大切にしている。哲学に関心があり、劇中にも多々哲学者の引用や哲学的な表現を好んで多用する。

  • スティーヴ
     非常に明るく陽気、将来は政治家を目指している。学校中の人気者で校内選挙にも立候補すると勝手に支持者がスティーブの選挙活動を行ってくれるし、パーティに行けば主役、壇上に上がれば大歓声が沸く。

 

 アンドリューが「クロニクル」を必要としたのは、自己の日々の辛さからの逃避故、出来るだけ客観的に時には人事のように物事を捉えたかったためでしょう。(最初は暴行などを受けた際の証拠品として使うのかと思ったけど) 多重人格のようになってしまったり、自暴自棄になってしまうスレスレの精神状態を母の存在が彼の心をなんとか食い留めていた。自分の生きる理由は母の存在、自分の価値はそこにある。そう彼は考えていた。

 毎日テレビで流れるニュース映像をBGMに笑いながら食卓を囲む異常な現代社会への問題提起のようです。テレビや動画配信サイトなど、映像を見ると途端にリアリティは薄まり、他所事に感じてしまいますからね。

 つまりアンドリューのクロニクルは「第二の目」だった。

 

 そのクロニクルはやがて自己への執着=孤独から開放され、和やかな友人たちとの日々、楽しいイタズラなどに変わっていく。パーティではアンドリューではない人物(ケイト)が持っていたビデオでクロニクルさせる。またこのクロニクルを用いたアンドリュー自身の精神状態の変化の見せ方も非常に関心しました。お守りのように常に身の回りに置いていたアンドリューが様々な経験を経て自分を写さないようになったり。父に初めて反抗をし、そして遂には自分を大事にしてくれるスティーブのことまで…。

 話は逸れますが、これは歳に関わらず、大したことのない問題、いや大したこと問題だったとしても、1人で自分を追い詰め追い込んでしまうんですよね。誰かに話せば、割とあっさり解決するのに、自分で抱え込んで「もう自分は終わりだ、世界は終わりだ、世界なんて無くなってしまえばいいんだ」と考えてしまう。思春期には特に強く現れる感情だと思います。

 さて。混乱を極めたアンドリューですが、唯一の目的・唯一の心の持ち先は「母の病気を治すこと、母の薬を買ってあげること」でした。結果として強盗をしたり窃盗をしたり。あれだけの力があるのだからもっと上手い盗み方もあるのに、彼の選ぶ方法はいつもその場凌ぎ。結局、反抗がバレ追い詰められたところへ、父親のトドメの言葉。「母は死んだ。ずっと母さんの側にいたのに、1日だって欠かさず側にいたのに、今日に限って、お前が今日に限って色んな事を起こすから母さんの側にいてやれなかった、たったその1日なのに、今日母さんはいなくなってしまった」

 アンドリューの絶望の爆発、暴走は止まることはありません。そしてそれを撮影する警察、報道、民衆の「クロニクル」。

 

参考:最後に全体の核となるすべての始まり、起承転結の起が凄い。怒涛の伏線ラッシュがわずか15分。

アンドリューの家。アンドリューx父x母

 冒頭のシーンはアンドリューの部屋。鏡越しにカメラをセットしている様子が写っている。このシーンでは父親の罵声が聞こえるドアを鏡で塞いでいる様子と、壁に手書きのスーパーヒーローらしきイラストが貼られているものが写る。お世辞にも上手とは言えない。※カメラには疎くて値段もさっぱりわからないけれど、そう高いカメラでは無いらしいです。

 また怒号を挙げて暴れる父親とは対照的に、病床に伏せ生命維持装置をつけ衰弱しきった母親の姿が写されます。優しい母、アンドリューが撮影している事にも深く追求はせず、笑顔でアンドリューのカメラを褒めてくれます。値段は高くは無さそうだけど、少しでも心地良く、との思いからなのか、ベッドシーツなどの至る所の趣味が可愛らしく揃えられています。アンドリューの声から、アンドリューが母に一番心を寄せ、とても大切にしているということも伝わってくるシーンです。

 

マットの車で登校。アンドリューxマット

 [運転しているマットはアンドリューに撮影されっぱなし。困った顔をしている]
 マット    「………」 
 マット    「……で?何撮ってるの…」 アンドリューの小さな声を聴くためかBGMの音量を下げるマット。
 アンドリュー 「わからない。I don't know。とりあえず撮ってる」
 マット    「……」 溜息を着く直前のような伏し目がちの顔。どう答えたらいいのか分からないのか。
 アンドリュー 「何でも撮ってる」
 マット    「……何でも?」
 アンドリュー 「うん」
 マット    「……OK」

 そしてマットは覚悟を決めたのか、突然大声で歌い出す。
 ※ちなみにマットが歌った曲は「♪Price Tag」(by Jessie J)。歌詞の意味は「金金金の世界だけど、金なんかに価値は無い。私達誤解してる。私達に必要なのは金ではなく幸せであることだ。例えば睡眠にいくらの価値があるか分かる?いくらの値段がつけられる?皆ちょっと待って。笑顔のために、ちょっと立ち止まって。深刻にならないで。」「Tag Priceなんて忘れて、せめて今日は世界中踊ろう!」という曲。

 大声で笑顔で歌うマット。「うるさいよ~、はしゃぎ過ぎだよ」とアンドリューは戸惑いを見せるが、最後にはつられて笑う。アンドリューが笑ったところで、マットはショーペンハウアーの哲学を語る。「人が幸せであるためには、自己が如何に純粋なのか理解をする必要があるんだ。感情や欲では満たされない。逆に欲によって純粋さを失ってしまうんだ。」

 解釈に困ったのかアンドリューは少し悩んだ後「……物事の全てには意味は無いということ?」と返す。(正直、聞いた瞬間「オイオイ、アンドリューも深いな!」と突っ込んでしまいました) マットは少し考えた後、さわやかな笑顔で「そう!」と力強く答えるのでした。

 学校に到着してもマットはアンドリューと一緒には降りない。アンドリューを車からおろした後、再度めんどくさそうに車のBGMの音量をあげるのです。いじめられっ子とは学校では一緒に居られないということなのか、彼女との時間がその後あるのか、マットにはマットの悩みがあって1人になりたい時間なのか、また他の理由があるのかは分からない。アンドリューのクロニクルはアンドリューが持っていったから。

 ここまでで始まって5分。たった5分なのに怒涛の伏線ラッシュ。そして色んな事がもう分かってくる。超ハイテンポです。アンドリューが思い詰めていること。マットはアンドリューを励まそうとしているがアンドリューの反応に戸惑いを見せることから親友と言えるほどの仲では無いのかもしれない、と察せます。なお先程の質問の真意は「僕の悩みはいつか解決するのだろうか?僕にも価値があるんだろうか。」という質問で、それを理解したマットは、全力の笑顔で「勿論!」と答えたのだということも。

 

学校。アンドリューx生徒の群れ

 まず学校に到着すると同一人物の黒人男性の選挙ポスターが色んなパターンで掲示されまくっています。真白な歯でニッカリと笑うスティーブという陽気そうな黒人男性。更に生徒が選挙広報活動のビラ配りをしているようで「スティーブに票を入れてよね!」とすごい剣幕で女の子からチラシを無理やり渡されます。ビラに写っているのは先程と同じ黒人男性。

 元々いじめられっ子なのにカメラを持って歩いているものだから片っ端からからかわれたり喧嘩を売られたりします。グラウンドを背景に自分の背中を撮っていたら、ビデオ的には左端にちらっと写っていたチア部からクレームを受け(右端にはアメフト部が写ってるw)。更にはチアの彼氏まで出てきてボコボコに殴られます。それらも全てクロニクル。

 

パーティへ。アンドリューx生徒の群れxマットxスティーブ

 ボコボコに殴られた帰り道(マットに車で送って貰っています)。マットからパーティに来るよう強い誘いを受けます。嫌がるアンドリューですが、マットの説得を受け、渋々パーティへ。しかしパーティ会場に着いた途端にマットは「じゃあここからは1人で行動してみろ」と突き放します。困ったアンドリューですが、とりあえずビデオを回し続けます。男の子だから綺麗な女の子がいればつい目がいってしまう。同じ視点でクロニクルされていきます。で、昼間に同じく、録画された女の子の彼氏が現れボコボコ以下ry

 その頃マットと言えば、自分の彼女に嫌味を言われながらも懲りずに哲学を語っています。「ユングは言ってた。パーティではヤル相手を探す場だと」。高校生らしい捻りの聞いた表現だと思いますが、恐らく元ネタはユング提唱心理学の外向(ペルソナ)と内向(アニマ)、またコンプレックス・意識/無意識との対峙法を読んだのでしょう。マットがアンドリューを連れ出しいきなり放置したのはイジメじゃなくて、治療の一貫のつもりなのです。ここでもマットのさりげない優しさがキラリ。※ちなみにこの映像は、アンドリューのカメラではなく彼女がブログ用に使っていたカメラの映像。ここでアンドリューのクロニクル以外の情報もちゃんと見られるんだな、ということを私達は知ることが出来ます。ただしあくまでクロニクル。

 話は戻りまして。そんな優しいマットの願いなど露知らず、ボコボコにされたアンドリューはパーティ会場を抜けだし、草むらで1人メソメソと泣いています。そこへ昼間ビラを配られまくっていた人気者スティーブが登場します。アンドリューに「カメラで撮影して欲しいってマットが言ってるんだ、お願い出来ないかな?」と。アンドリューは突然現れた人気者にオドオドしながら「よく僕のこと知ってたね……」と接しますが、爽やかスティーブ。笑顔でサラリと「何言ってるの!一年で同じクラスだったじゃない!そういうのをちゃんと覚えておくのも僕の特技だよ~」なんて話すのです。アンドリューが暗いもんだから、スティーブの眩しいこと(笑)シーンは真夜中ですがw

 

そして禁断の穴へ。アンドリューxマットxスティーブ

 不思議な穴がぽっかりと空いている。そして何か音がする。音に吸い込まれるかのようにマットとスティーブは穴に飛び込んでいきます。アンドリューもやけくそになって穴に落ちる。そこにあったのは、なんと表現すべきか。水晶の結晶のような、ツララのような、生き物のようにも感じる光り輝く氷のような鉱石。それに吸い込まれるようにマットは触れてしまいます。すると、量子論の光のスペクトルのように色の波長が勝手に変化していくのです。光は粒であり波である。ただし光を放つには光の原因がある。この作品でのここの光のシーンはとても抽象的で印象的で、且つ現代物理的でした。力を持つ意思を持つ量子の固まりが素粒子となって光を放ちそして人間へ影響を及ぼした。そうです、ここのシーンから、3人には超能力の力が芽生えるのです。

 余談ですがこの穴に入る時、マットは「プラトンの洞窟」と例えました。この寓話には諸説ありますが、わたしは要するに「自分が見てきた世界はとても狭くこの世は未知に溢れている、人類は自分が見ているものを全て正と思ってしまう、そしてそれは愚かという点においても未知を味わうという点においても恐怖である」と解釈しています。だけど人は立ち向かっていく。今感じる恐怖はまさにプラトンの洞窟と同じだと。マットは優しく賢く、そして強い男なのだと感じました。

 

 ラストまで見れば、あの冒頭のシーンにあったアンドリューの部屋のヒーローの落書き、母がアンドリューに「あなたは強い子よ、強い子よ」と諭されたシーンが蘇ります。アンドリューはとにかく強くなりたかったんですよね。でもアンドリューに必要だった力はこの力じゃなかった。その力を持ったところで結局人を救うことは出来なかった。アンドリューは終始浮かれていて気付くのが遅かった。出来なかったと嘆き、結局暴れてしまった。幼稚なままとも言うし、純粋過ぎた、とも言えるでしょう。

 最後にマット。冒頭ではアンドリューに「僕のこと好き?you like me?」と聞かれ答えにどもってしまいました。「好きだけど、話しにくい時もある」なんて返事していました。でも、マットはアンドリューと濃厚な日々を過ごし体を張ってアンドリューを助けようとした。ラストのシーンでのマットの言葉。「あ、言い忘れてた。I love you。愛しているよ。君は悪い奴なんかじゃないよ」。うーん染みる。やっぱりマットはアンドリューを大事に思っていた時のままなのですよね。likeはloveへと変わり、アンドリューが見たがったところへ連れていってあげる。そしてただただ自分を責めて責めてパニックと化しモンスターとなったアンドリューへ今も尚「君は悪い子じゃない」と呼びかける。

 

 うーん。唸らされる。とても面白かった。

過去に書いた記事もちょいちょい書きなおしたりします。記事作成日はリスト調整のため、手動でいじる事が多いため、観賞順ではありません。
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